絵本 『ブライディさんのシャベル』 の効果

3月11日。地震当日、園で大揺れがありました。お昼寝中だった子どもたちを起こし、机の下に潜り込み息をひそめること3回。少しおさまって、おやつを食べた後、お迎えが来るまでの15分に2度読んだお話です。
うちの園では、1時半お帰りの前に素話、4時帰りの子には、親がくるまでに時間がある時のみ家庭に貸し出ししている絵本を読むことがあり、これは、私の生きる希望の本でもあり、本箱にあったものを即座に手にとり、子どもに読みました。子どもたちは「もう一回読んで!」とせがみました。

ネガティブな思いや恐怖ばかりが巡らないように、ちがった世界へ誘うこともできたと思います。

幼児なので、直接的な災害や事故の意味よりも、<生きる>ということのメタファーがポジティブに響くものがよいと思いました。これには、開拓→創造→惨事→再生→希望 そのものが日常の生活(人生)の中にすべてあります。



d0231842_16251834.jpg『ブライディさんのシャベル』  BL 出版 刊
文 レスリー・コナー
絵 メアリー・アゼアリアン
訳 千葉茂樹


(下記に出版社及び翻訳者のご了解を得て内容を掲載します)

「それは、1856年のことでした。新天地へ旅立つブライディさんは、チャイムのなる時計でも、陶器の人形でもなく、一本のシャベルをえらびました。

ブライディさんは、納屋につるしてあったシャベルをもって、大海原をわたる船に、のりこんだのです。荒海にもまれて船が大きくゆれたとき体を支えてくれたのは、シャベルでした。

ニューヨークの港につくと、シャベルに荷物をくくりつけ、肩にかついで船を降りました。
小さな帽子屋で、部屋と仕事を見つけたときも、シャベルといっしょ。
早起きした朝には、シャベルをもって裏庭に出て、小さな花壇づくりに精を出しました。

春になると、育った苗を箱に並べて売りました。庭のある家の奥さんたちがお客です。
冬には、シャベルをもって公園に出かけます。静かに降り積もる雪に、細い道をつけ、凍った川に降りて行きます。シャベルで雪かきをして、月の光を浴びてスケート遊び。

スケート仲間の若者と結婚したブライディさんは、引っ越す時も忘れずに、シャベルを 持って行きました。ヒツジやヤギの囲いを作るとき、シャベルで穴を掘るのは、ブライディさんの仕事。ブライディさんは、畑を作って種を蒔きました。

やがて、丘の上の農場には、果物でいっぱいの果樹園と、トウモロコシがたくさん採れる畑ができました。リンゴの貯蔵庫を掘るときも、もちろんシャベルが大活躍。

大雨で小川が溢れたとき、キッチンに流れ込んだ泥をとりのぞいたのはこのシャベル。
ブライディさんは、シャベルで池をひろげ、まわりに土手をつくりました。

ブライディさんに赤ちゃんが生まれるとき、お医者さんの馬車を、ぬかるみから救い出したのもブライディさんのシャベルでした。

子どもたちを温め、パンをこんがり焼いてくれるストーブに石炭をくべるのも、このシャベル。

ある夏のこと、日照りが続き、小川が枯れて、畑が心配です。遠くに雷の音が聞こえ、 ひと安心。もうじき雨が降るでしょう。乾いた大地を潤してくれるでしょう。そのとき、ブライディさんは、雷が落ちるのを見ました。雷が落ちたのは、ブライディさんの農場の納屋!
大急ぎでかけつけて、燃えさかる納屋から家畜を逃がしました。
激しい雨が畑の作物を押し流すのを、ブライディさんは不安な気持ちで見つめていました。

もういちど、やりなおせるでしょうか。ブライディさんは、焼け跡を探し回り、柄の焼け落ちたシャベルを見つけました。そこで果樹園から手ごろなリンゴの枝を見つけてきて、シャベルの柄を作りました。

ブライディさんは、もういちど畑を耕し、子どもたちと一緒に花を植えました。
子どもたちもどんどん大きくなっていきます。ブライディさんは、道のわきで果物や花を売りました。

こうしていくつもの夏が過ぎていきました。愛する夫が病気で亡くなったとき、ブライディさんは悲しみをこらえ、シャベルをもって丘に登りました。夫のために一本の木を植え、そのまわりには花を植えました。

春がやってくるたび、夫を思い出すように花が咲きました。
冬には、凍った池の雪かきをして、孫たちと一緒にスケートあそび。夜、納屋にシャベルをつるすと、ブライディさんは、雪に覆われた静かな農場を見渡します。

それは、遠い1856年のことでした。
ブライディさんは、チャイムの鳴る時計でも、陶器の人形でもなく、一本のシャベルを選んだのです。」

(了)


(編集者の方、翻訳の千葉茂樹さん、掲載のご了解ありがとうございます)
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絵も木版画のようなとても素朴で暖かいものです。
この絵本は、19日の私の電話相談でも紹介したものですが、今、出版社の方では品切れで手に入らない状況のようです。私たち読者が再版の声を大きく上げれば重版してくださるかもしれません。

地方の友人で、震災直後の子どもたちの心のケアに読んであげたいお話を今集めている人がいます。
友人には、メールで全文をタイプして送りましたので、何らかの形で何人かの子どもたちはきくことができると思います。



他に同じ出版社、同じ絵描きさん、同じ翻訳者の方の2冊もご紹介。

●『夜明け前から暗くなるまで』
●『ヘレンのクリスマス』


それから、これは幼児ではなくもっと大きい子用かもしれません。大人にもよいかと思える絵本です。

『シェイカー通りの人びと』 ほるぷ出版 
 アリス&マーティン・プロベンセン 作  江國香織 訳
 
 自然災害ではありませんが、貯水所(ダム)建設で村が水に沈み、去る人がほとんどの
 中、残った人たちが新しい町で住む様子を描いています。
           
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by silverfountain | 2011-03-22 17:02 | 精神・心への栄養
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