震災から復興へ - いまをどう生きるか -

Palsystem <Kinari きなり> 9月1回 カタログ表紙より

エネルギー依存を前提に、ひたすら「成長」をめざして突き進んできた、これまでの社会や経済。震災以前からそうした社会への違和感を唱え、地域の生態系やコミュニティを土台とする「もうひとつのあり方へ」とメッセージを発信し続けてきた辻信一さん。震災を機に、「原発」と正面から向き合うことになった私たちが、同じ後悔、同じ過ちを二度と繰り返さないために、次の世代に安心して暮らすことのできる社会を手渡すために、これからとるべき舵の方向を、改めて辻さんに問う。

「いのちの営み」を経済の基本に。
原点に還ろう!
文化人類学者、環境活動家 辻信一さん

原発は、未来への「罪」。

 東京電力の原発事故により、地域の暮らしもコミュニティも産業も環境も、すべて奪われる形になった福島。事故はいまだに収束のめどが立たず、避難生活も長期化しているうえ、いわれのない風評被害に多くの人びとが苦しめられている現実がある。

 「福島は僕たちの物語の犠牲者だ」と辻さん。「豊かな海と大地に恵まれた日本を象徴するような土地である福島。そこが地震や津波だけでなく原発によって大きな被害を受けたことを僕たちは重く受け止めなければならない。本来、福島の人々が背負ってきたリスクの半分は僕たち都会人が負うべきものなのに・・・」

 辻さんが言う「僕たちの物語」とは経済のことだ。その基本は、「人間の欲求は無限」という考え方。限りなくエネルギーを使い、商品を作り、消費し続ける・・・・・。そこには、「未来」や「他の生きもの」に対する気遣いも想像力も働いてはいない。

 「たとえば、この先何万年もいのちを脅かし続ける原発からの放射性廃棄物やプルトニウムをどうするのか、じつは誰も知らない。そんなものを大量に生み出し、この瞬間も作り続けている。未来の人びとは、そんな負の遺産をただ引き継ぐしかないのです。なんと罪深いことか」。辻さんは語気を強める。

「懐かしい未来」のための社会づくりを。

 私たちは、この「正気の沙汰とは思えない物語」からどう脱するか。
「大都会に住んで、この物語のなかをずっと歩いてきたエリート専門家たちにはたぶん答えはないでしょう」と辻さん。「いま、その問いへのいちばん明確な答えを持っているのは、福島とその周辺地域のお母さんたちじゃないかな」
 
 おだやかな日常から一転、幼い子どもを抱えて不安と恐怖の渦中に投げ込まれてしまった母親たち。何が本当にたいせつなのかを、彼女たちは今、痛切に感じている。「子どもたちのために、いい空気、いい水、安全な食べ物を!」―――このシンプルな願いこそがじつは生きものとしての人間の原点であり、そうした誰にも必要なものを、すべての人々に持続的に行き届かせるしくみこそが、本来の意味の「経済」だ、と辻さんは説く。

 原発の代替案として自然エネルギーが、がぜん注目されている。しかし、「今の高エネルギー消費型の社会のままで、代替なんて不可能」と辻さん。「エネルギーシフトは同時に、低エネで循環型の経済への大転換でなければならない。それはまた僕たち自身のシフトです。心と暮らしをスロー・スモール・シンプルな方向へ引き算してゆく。その先に、人間の身の丈に合った社会がある。それが僕たちの『懐かしい未来』です」



d0231842_6115913.jpgつじ・しんいち
明治学院大学国際学部教授。
「100万人のキャンドルナイト」
呼びかけ人代表や環境文化NGO
ナマケモノ倶楽部世話人として、
数々の環境文化運動や環境共生型
ビジネスに取り組む。著書に、
『スロー・イズ・ビューティフル』
(平凡社ライブラリー)、
『「ゆっくり」でいいんだよ』
(ちくまプリマー新書)など多数。






参考サイト:
http://www.earth-garden.jp/magazine/13021/













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