カテゴリ:精神・心への栄養( 63 )

絵本 『ブライディさんのシャベル』 の効果

3月11日。地震当日、園で大揺れがありました。お昼寝中だった子どもたちを起こし、机の下に潜り込み息をひそめること3回。少しおさまって、おやつを食べた後、お迎えが来るまでの15分に2度読んだお話です。
うちの園では、1時半お帰りの前に素話、4時帰りの子には、親がくるまでに時間がある時のみ家庭に貸し出ししている絵本を読むことがあり、これは、私の生きる希望の本でもあり、本箱にあったものを即座に手にとり、子どもに読みました。子どもたちは「もう一回読んで!」とせがみました。

ネガティブな思いや恐怖ばかりが巡らないように、ちがった世界へ誘うこともできたと思います。

幼児なので、直接的な災害や事故の意味よりも、<生きる>ということのメタファーがポジティブに響くものがよいと思いました。これには、開拓→創造→惨事→再生→希望 そのものが日常の生活(人生)の中にすべてあります。



d0231842_16251834.jpg『ブライディさんのシャベル』  BL 出版 刊
文 レスリー・コナー
絵 メアリー・アゼアリアン
訳 千葉茂樹


(下記に出版社及び翻訳者のご了解を得て内容を掲載します)

「それは、1856年のことでした。新天地へ旅立つブライディさんは、チャイムのなる時計でも、陶器の人形でもなく、一本のシャベルをえらびました。

ブライディさんは、納屋につるしてあったシャベルをもって、大海原をわたる船に、のりこんだのです。荒海にもまれて船が大きくゆれたとき体を支えてくれたのは、シャベルでした。

ニューヨークの港につくと、シャベルに荷物をくくりつけ、肩にかついで船を降りました。
小さな帽子屋で、部屋と仕事を見つけたときも、シャベルといっしょ。
早起きした朝には、シャベルをもって裏庭に出て、小さな花壇づくりに精を出しました。

春になると、育った苗を箱に並べて売りました。庭のある家の奥さんたちがお客です。
冬には、シャベルをもって公園に出かけます。静かに降り積もる雪に、細い道をつけ、凍った川に降りて行きます。シャベルで雪かきをして、月の光を浴びてスケート遊び。

スケート仲間の若者と結婚したブライディさんは、引っ越す時も忘れずに、シャベルを 持って行きました。ヒツジやヤギの囲いを作るとき、シャベルで穴を掘るのは、ブライディさんの仕事。ブライディさんは、畑を作って種を蒔きました。

やがて、丘の上の農場には、果物でいっぱいの果樹園と、トウモロコシがたくさん採れる畑ができました。リンゴの貯蔵庫を掘るときも、もちろんシャベルが大活躍。

大雨で小川が溢れたとき、キッチンに流れ込んだ泥をとりのぞいたのはこのシャベル。
ブライディさんは、シャベルで池をひろげ、まわりに土手をつくりました。

ブライディさんに赤ちゃんが生まれるとき、お医者さんの馬車を、ぬかるみから救い出したのもブライディさんのシャベルでした。

子どもたちを温め、パンをこんがり焼いてくれるストーブに石炭をくべるのも、このシャベル。

ある夏のこと、日照りが続き、小川が枯れて、畑が心配です。遠くに雷の音が聞こえ、 ひと安心。もうじき雨が降るでしょう。乾いた大地を潤してくれるでしょう。そのとき、ブライディさんは、雷が落ちるのを見ました。雷が落ちたのは、ブライディさんの農場の納屋!
大急ぎでかけつけて、燃えさかる納屋から家畜を逃がしました。
激しい雨が畑の作物を押し流すのを、ブライディさんは不安な気持ちで見つめていました。

もういちど、やりなおせるでしょうか。ブライディさんは、焼け跡を探し回り、柄の焼け落ちたシャベルを見つけました。そこで果樹園から手ごろなリンゴの枝を見つけてきて、シャベルの柄を作りました。

ブライディさんは、もういちど畑を耕し、子どもたちと一緒に花を植えました。
子どもたちもどんどん大きくなっていきます。ブライディさんは、道のわきで果物や花を売りました。

こうしていくつもの夏が過ぎていきました。愛する夫が病気で亡くなったとき、ブライディさんは悲しみをこらえ、シャベルをもって丘に登りました。夫のために一本の木を植え、そのまわりには花を植えました。

春がやってくるたび、夫を思い出すように花が咲きました。
冬には、凍った池の雪かきをして、孫たちと一緒にスケートあそび。夜、納屋にシャベルをつるすと、ブライディさんは、雪に覆われた静かな農場を見渡します。

それは、遠い1856年のことでした。
ブライディさんは、チャイムの鳴る時計でも、陶器の人形でもなく、一本のシャベルを選んだのです。」

(了)


(編集者の方、翻訳の千葉茂樹さん、掲載のご了解ありがとうございます)
・・・・・・・・・・



絵も木版画のようなとても素朴で暖かいものです。
この絵本は、19日の私の電話相談でも紹介したものですが、今、出版社の方では品切れで手に入らない状況のようです。私たち読者が再版の声を大きく上げれば重版してくださるかもしれません。

地方の友人で、震災直後の子どもたちの心のケアに読んであげたいお話を今集めている人がいます。
友人には、メールで全文をタイプして送りましたので、何らかの形で何人かの子どもたちはきくことができると思います。



他に同じ出版社、同じ絵描きさん、同じ翻訳者の方の2冊もご紹介。

●『夜明け前から暗くなるまで』
●『ヘレンのクリスマス』


それから、これは幼児ではなくもっと大きい子用かもしれません。大人にもよいかと思える絵本です。

『シェイカー通りの人びと』 ほるぷ出版 
 アリス&マーティン・プロベンセン 作  江國香織 訳
 
 自然災害ではありませんが、貯水所(ダム)建設で村が水に沈み、去る人がほとんどの
 中、残った人たちが新しい町で住む様子を描いています。
           
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by silverfountain | 2011-03-22 17:02 | 精神・心への栄養

日常を淡々と、真・善・美で満たす

<ぎんのいずみ子ども園 入園のしおり>より抜粋



家庭で心がけていただきたいこと - 子ども時代(幼少期)に親がしてあげられる最大の贈り物

*早寝早起きをする。早朝の澄んだ空気は一日のやる気を生み、生命エネルギーが活性化します。それを得るためには夜も早く寝かせましょう。食欲も整ってきます。夜更かしは肝臓の不調の原因ともなり、すべてが悪循環につながってしまいます。「お日さまと共に起き、お日さまと共に寝る」くらいの気持ちで。

*鳥の声に耳を済ませたり、花や虫とお話したり、朝陽や夕陽を静かにみたり、月や雲をみる。行く風を感じるなど。1日一つ、自然の美しさや驚きをみつけて下さい。生命エネルギーを生き生きとさせる一番の方法です。そういった感覚の悦びが世界に目を向ける好奇心を広げます。

*テレビやゲームから遠ざけて、家事を一緒にやったり、触れ合い遊びをしてあげたり、わらべうた、昔話などで、子どもにとっての将来の贈り物を日々ひとつずつ蓄えてあげましょう(心魂的な貯金です)。子どもがいるからこその大人の楽しみにしましょう。

*1日5分、何も話さず、静かにする時間を持ちましょう。ろうそくをつけてお祈りしてもいいかもしれません。忙しい日常からは生み出せない、静謐でおごそかな時間に大人も浸ってみましょう。(ろうそくは、精神世界への門とも言われています。こうして精神界の高次の存在に耳を澄ましたときに、それが大人の心の覆いにもなり得ます。)





* * * * * * *  ひと言

先日、今年度最後の親子クラス『いずみの小人』の時、計画停電で略式だったのですが、3組の親子が来ました。その時、一人の母親が言った言葉『こんな時ですが、家ですることはやっぱり、このクラスでいつも言われていることでいいんですね。家でも家事をする親のそばで淡々とこうやって一人でごっこ遊びしています。」はやはり、子どもとの過し方の本質を突いているように思います。

子どもの前では、何も特別なことをする必要はありません。ただ、私たち大人は、自分の心や精神の栄養補給のために<真・善・美>を自分に合った方法で取り込む必要はありますが。。。

さあ、また調布市はこれから、4度めの計画停電です。
あとでまたまとめます。


2011年3月22日 12:25

HISANO
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by silverfountain | 2011-03-22 12:25 | 精神・心への栄養

福井新聞 『東日本大震災、子どもに災害をどう伝えるか』 転載

<非常事態の中、話をして心を支えるために>

災害について子どもにどう伝えるか、ショックやトラウマを受けた子どもの心をどう支えたらいいのか。大人自身が、そして社会全体が大変なときに、容易なことではありません。でも、私たちにできることはたくさんあります。将来を担う子どもたちのために、一緒にがんばりましょう。

1)テレビを消しましょう

必要以上にテレビでニュースを垂れ流しにするのはやめましょう。できる限り、他の情報収集手段を駆使し、子どもがいないところでニュースをチェックしましょう。大人には「同じ映像を繰り返し流しているなあ」と一目瞭然のことでも、子どもは、今も怖いことが続いて起こっているのかと受け止めます。

また距離感が分からないので、危機を自分のごく身近なことと感じてしまいます。テレビからの情報で子どもがトラウマを受ける可能性を考慮して、慎重に判断しましょう。

2)まずは安心させて

子どもは様々な形で不安を表現します。甘えん坊になり何かにつけてぐずぐずしたり、一人で寝るのを怖がったり、逆に反抗的になったり。中にはお漏らしをしてしまったり、頭痛や腹痛を訴えるといった、実際に身体的な変化や痛みとして現れることもあります。たくさん抱っこしてあげたり、一緒に過ごす時間を大切にしましょう。

そして、子どもがかけがえのない存在であることや、その子を守るために全力を尽くしている、といった、言わなくても分かっているだろう、当然のことも、ときにはきちんと言葉で伝えてあげることも大事です。言霊という通り、言葉にして伝えることにより、子どもにより強い信頼感、安心感を与えます。

3)子どものそのままを受け入れる

子どもの気持ち、考え、疑問、反応、すべてをそのまま受け入れ、認めてあげましょう。オープンで受容的な雰囲気を作り、子どもが何でも話したいことや聞きたいことを表現できるようにします。しかし、まだ話したがらない子に無理に話させることは逆効果になることもあります。特に今の一瞬一瞬を生きている幼児の心は夢の中のように流動的で、大人のように記憶や感情を心に溜めていないこともあります。

後述しますが、子どもは絵を描いたり、ごっこ遊びをしたりして、気持ちを表現し、心を癒していることもあるので、話すことだけにこだわらず、トータルに子どもを受け止める視点を持ちましょう。

4)子どもが質問してきたときが話をする一番いいタイミング

幼い子どもに甚大な災害について話すのは容易なことではありません。でも子どもが聞いてきたとき、または、子どもが耳にした情報で怖がっているときなど、親としての勝負時という気持ちで、きちんと子どもに向かい合ってあげるべきです。人生で何度もない(あってはならない)重大事件であり、親子関係にとっても決定的瞬間のひとつです。子どもの性格や考え方、反応の仕方などを一番分かっている親が、真剣に心を込めて語ることが何より大事です。テレビまかせ、先生まかせでは子どもの不安が増大するばかりです。

5)細かい科学的説明や恐怖をあおるような視覚的イメージは避け、シンプルな叙述で

大丈夫だと嘘をついたり、事態を無視・軽視するような態度は、子どもは直感的に偽りを感じます。事実をその子に分かる言葉で説明してあげましょう。子どもは天性の回復力、順応性、前向きな明るさを備えており、大人の想像以上に強い芯を持っています。その強さを信じて、真摯に向き合えば、必ず子どもは応えてくれます。

6)希望が持てるような終わり方に

警察や消防隊員らが懸命に働いてくれているとか、県外・海外からも援助が来ている、みんなで力をあわせてがんばっている、というようなポジティブな情報を伝えて、ハッピーエンディングとは行かないまでも、落胆や恐怖よりも復興や希望に焦点を置いた終わり方にします。語る大人にも力を与えてくれるはずです。

7)何度でも繰り返して

大人の話が分かりにくい、信じがたいという場合、繰り返し聞いてくる子どももいるでしょう。何度でも繰り返し答えてあげてください。同じ話を繰り返し語られることで安心し、少しずつ消化することができます。

8)リズムを取り戻す

お話に限らず、子どもはすべてにおいて繰り返しが好きです。大人も毎日の日課・習慣が崩れると不安が増し、体調にも影響します。可能な限りこれまでと同じリズムを取り戻しましょう。何がなくとも、おはよう、いただきます、ごちそうさま、などの挨拶だけはできます。生活が激変してすべてが流動的な場合は、朝に子どもと一緒に身体を動かす、食事の前にみんなで手を合わせる、黙想するといった新しい習慣を取り入れて、毎日繰り返すことでもリズムが生まれ、子どもが安心できる心の基地の役割を担ってくれます。嵐の海から見える灯台の灯りのように、私たちの心を導いてくれるでしょう。

9)子どもが遊べる場を

子どもの仕事は遊びです。通常なら当たり前のことですが、非常事態の中、遊びなど考えもつかないかもしれません。前述のように、子どもは未消化の経験や感情を、絵に描いたり、ごっこ遊びとして繰り返して、表現することがあります。一時的でも遊びに没頭し、遊びきることにより、身体を動かし、気持ちを表現し、心身ともに平常の状態に近づけることができます。状況の許す限り、子どもが子どもでいられる時と場所を用意してあげてください。特別なものは要りません。その昔、石ころ一つで遊んだ遊びを教えてあげてください。紙と鉛筆があれば絵をかいてもいいよと渡してあげてください。

10)大人がお手本に

子どもは真似をする生き物。大人を鋭く見ていて、そのまま真似をします。実際の行動もさることながら、大人同士の会話、心の持ち様まで、すべてです。だからといって、子どもの手前、取りつくろったり、無理に背伸びをせよというわけではありません。未曾有の災害に遭い、大人も恐怖や不安を感じながら、それでも希望を失わず立ち向かっている、そのままの姿に子どもは勇気づけられます。失敗もするし、後退することもあるけれど、人間として向上しようと精一杯努力を続ける大人の姿、それを子どもは手本として学び、栄養として育ちます。

他にも、子どもと一緒にできる具体的な行動を起こす(募金をする、お手伝いをする、祈る)、悲しみや困難を乗り越える内容の昔話や勇気を題材にした童話など、お話の世界に浸らせてあげる、、、、などなど。親としての直感を信じ、勇気を持って行動してくださることを、子ども達の明るい笑顔が一日も早く戻ることを祈ってやみません。

参考:執筆にあたり、下記の情報を参考にしました。

■米国精神医学協会のウェブサイト

■ニューヨーク大学精神医学科小児研究センターのウェブサイト  

■Mr.ロジャース(教育者、アメリカで30年以上続いた子ども番組の製作者兼ホスト、作詞家)のウェブサイト  

■グリーンメドウウォルドルフスクール(米国ニューヨーク州)幼稚園教諭、アンドレア・ギャンバデラ先生にお話をお聞きして


Source:
http://www.fukuishimbun.co.jp/modules/teach/index.php?page=article&storyid=415
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by silverfountain | 2011-03-22 06:59 | 精神・心への栄養